第6章 〜神崎さん〜
近くのカフェに着くまでふたりとも無言だった
少し寒いけどテラス席にしてもらった
人があまり居ない方が良いと思ったから
潤と最後に会ったあの日から
季節がひとつ変わっていた
「すいません。職場まで来て待ち伏せみたいな事して・・・。」
「いえ、大丈夫です。」
「自宅に伺ったんですがお引越されていた様なので」
「ああ、すいません・・・。」
あの後あたしはすぐに引っ越した。
潤との思い出が詰まったあの部屋に住み続ける勇気はなかった。
「愛利さん。」
「はい。」
「今更ですが・・あの時あなたを苦しめ、傷つけてしまったこと・・・本当にすみませんでした。」
そう言って神崎さんは深く頭を下げた。
「神崎さんが謝ることじゃないですよ。というか
誰が悪いわけじゃないです・・・。」
「私は誓約書まで書かせてあなたを追い詰めました。
あなたに非は全くないと言いながら、結局一番苦しんだのはあなたです・・・・。」
目を見たら神崎さんが本気であたしを
心配してくれてたって分かって
少し心があったかくなった