第1章 〜別れの始まり〜
短い沈黙のあと
あたしは引き出しから
1枚の写真を取り出し、神崎さんに渡した
「潤と写ってる写真はこれ1枚だけです・・・。」
そこには6年前
高校生だった潤とあたし
付き合い始めた頃、文化祭の準備の時
クラスメートが何気なく撮ってくれた1枚
じゃれ合って潤があたしを宥めるように
頭に右手をポンと置いてる
カメラの目線から外れて優しくあたしを見つめる
潤のその横側が
あたしは好きだった
「1枚だけですか・・・?」
神崎さんが写真を受け取りながら
意外そうに聞く
「はい・・・。1枚だけです。
これ以外はありません・・・。」
ジッと写真を見ていた神崎さんが
一瞬フッと笑って
「イイ顔だな・・・。」
って呟いた
「え・・・?」
「ああ、いえ。」
慌てたようにとりなして姿勢を正すと
ゆっくり深くお辞儀をして言った
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」
ねぇ潤
今どこで何してる?
あたしの声はもう届かないんだね
潤
あたし達今日別れたみたいだよ