【Collar×Malice】Lost Memory
第2章 chapter 零
指定された場所は、教会だった。
こんな状況だからか、神聖な場所であるはずの教会が不気味に見えてくる。
ここに市香がいる……。
息を呑み、常備しているナイフに手をかけ周囲を警戒する。
人の気配はなし、殺気も感じない。
だけど、私をここに呼び出した人物はいるはず。警戒は怠れない。
神経を周囲の警戒に傾けながらも、扉を開けると中を確認し――中央で横たわる市香を見つけた。
「っ、市香!!」
仰向けに横たわり、動かない市香を前に動揺した私は、そのま駆け寄ろうとして――背後から来た衝撃に耐えるまもなく意識を手放した。
『イイコだね、そう君は――の……だから』
「っ……!!」
思考を奪うような声、それが脳内で響くのと私の意識が戻るのと、どちらが早かったのか。
鈍い痛みが思考を鈍らせるが、それでも視界に映った市香の姿が、今が現実だと思い出させてくれた。
「いち、か……!」
振り絞るように声を出すけど、市香は動かない。
それどころか、おかしいのは市香だけではなく、自分の体もだと気づいた。
ずっしりと重い四肢に、声も振り絞った様な掠れたものを出すのが精一杯で。
もどかしかった、すぐそこに市香が倒れてるって言うのに。
私は必死に手を伸ばすけど、体を起こすのもやっとな私に市香を助け起こす術はなくて。
悔しい、悔しい!!
どうして肝心な時に私は役立たずなのか。
こんな時に動けなくて何が、市香を家族を守る、だ。
情けなくて、やるせなくてそれでも諦めるわけにはいかなくて。
必死に痺れたような腕を動かし、市香に触れようとしたところで……後ろの扉が音を立てて開いた。