【Collar×Malice】Lost Memory
第2章 chapter 零
「今はそんな事どうでもいいだろ、それよりも――そっちの女、早くしないと死ぬぞ」
死ぬと言った視線の先には、市香がいて。
何を言っているのか、私には理解出来なかった。
「いち、かが……死ぬ?」
呟いた声は震えていて、自分のものじゃないみたいだった。
「っ、大丈夫だ。解毒方法は分かってる」
「助けて、下さい。私は、どうなってもいいから、市香を……市香だけは!!」
重い腕を動かして、男の腕にすがりつく。
どうして、こんな事になってしまったのか、考えても答えは出ない。
だけど、私が今、こうすることで市香が助かるなら――
尚も言い募ろうとする私を遮り、緑の男が言う。
「言われなくてもそうするつもりだ。解毒しなきゃ、ろくに口も利けねぇだろうしな」
「笹塚の言う通りだ。俺達は助けるために来たんだ」
続け言われた言葉を、信じるしか道はなくて。
この人達が何を知って、今この場にいるのか知らなくちゃいけないのに。
そんな事よりも私は……市香の命を助けたいと、そう願った。
「わかり、ました……お願い、します」
その言葉を切っ掛けに、市香の首についている首輪に番号が入力される。
入力が終わると、ピーという電信音の後に市香の意識が戻った。
「ふぅ……解除は成功したみたいだな」
「よかった……」
成功の言葉に安堵し、息をついた瞬間だった。
今まで気を張ることで持っていた意識が、急に奥底まで沈む感覚に襲われる。
……っ、まだ意識を持っていかれたらダメなのに。
体は既にゆうことを聞いてくれなくて、私は市香と入れ替わるように意識を失った。