【Collar×Malice】Lost Memory
第2章 chapter 零
「だれ……?」
まさか、先ほど襲ってきた人物なんじゃ? そう思った私は、必死に扉の方を向こうとして――抱き起こされた。
「おい、しっかりしろ!」
男だった、黒い髪の……敵意はないと思う。
ただの勘でしかないけど、この人は市香の敵じゃない。
「いち、か……を」
それだけ言って、手を市香のいる方へと向ける。
伝わるか不安だったけど、男は私の言いたいことを察してくれたみたいだった。
「分かった、もう大丈夫だから喋るな」
そう言って、私の体を起こし扉へ持たれる様な体制にしてくれる。
寄り掛かった扉は冷たく心地よくて、気を抜くと意識を持ってかれそうになったけど、市香の事が気になって、ジッと男の方を見ていた。
そんな時だった。近付いてくる足音を聞いたと思ったら……2人の男が教会内へと入ってきた。
「柳先輩!」
「……その女か」
1人は赤髪長髪で眼帯をつけた男。
もう1人は小柄で赤い瞳をした男だった。
どちらも見覚えのない人物だったが、恐らく先程の男の仲間なんだろう。
「ああ、この首輪といい間違いない。ただ……」
何かを言い掛けてやめた視線の先には私がいる。
困惑したような表情に、こちらまでモヤモヤしてくる。
「なんですか、言いたいこと、あるなら……はっきり、いて下さい」
上手く回らない口を動かして、懸命に言葉を述べると返事は別の所から返ってきた。
「てか気になってたんだけど、こいつ誰ですか? 書いてあったのは、1人だけですよね?」
「それは――」
赤髪の言葉にまたも言い淀む、【柳】と呼ばれていた男。
はっきりしない状況に苛立ちを感じていると、緑の男が溜息混じりに言い捨てた。