第1章 遊園地
「うっわぁ~!!」
眼下に広がる夜景を見下ろしユメは感嘆の声を上げた。
今ユメはトランクスにお姫様抱っこされ、遊園地上空を飛んでいる。
少し冷たい夜風が興奮して火照った肌に心地良い。
「ほら、あそこ。パレードが出発したよ」
視線の先にはライトアップされた遊園地の中で、一段と輝く光の列が見えた。
空まで鳴響く音楽に合わせゆっくり進んでいくパレード。
「きれい……」
以前目の前で見たときも感動したけれど、上空からだと周りの夜景も加わり更に幻想的で美しく見えた。
うっとりとパレードを見下ろすユメをトランクスは目を細めて見つめていた。
愛しい愛しい、たった一人の女の子。
純粋に、彼女の喜ぶことは何でもしてあげたいと思う。
でも時折、自分でもどうすることも出来ない独占欲に駆られることがある。
彼女の全てを、自分のものにしてしまいたくなる。
……彼女と出会うまで、自分にこんな感情があるなんて知らなかった。
そして、時々ふと思う。
別々の世界に生まれてしまった自分たちがこうして一緒にいることは、もしかしたら不幸なことなのではないか。
彼女の本当の幸せを思うなら、自分は存在しないほうが良いのではないか……。
と、ふいにユメが顔を上げた。
「トランクス」
瞬間、考えていた事が聞こえてしまったのではないかと慌てる。
気付けばパレードは大分遠くに行ってしまっていた。
「あぁ、ごめん! 追いかけよう」
「ううん。違うの」
「え?」
ユメの、何もかもを見透かしたような黒い瞳がゆっくりと細められる。
「ありがとう。私、トランクスに逢えて本当に良かった」
幸せそうに言うユメ。
そう見えるのは、己の過信だろうか?
それでも、一気にこみ上げてきたものをぶつける様に、トランクスは強く、ユメを抱き締めた。
「トランクス?」
戸惑ったような彼女の声までが、たまらなく愛しくて……。
そんな自分は、きっと相当末期なのだろう。
トランクスはユメから顔を隠すようにして、言う。
「オレも、ユメに逢えて良かった……!」