第1章 遊園地
「……っは」
長く感じたキスが離れると、ユメはそのままトランクスの胸に顏を埋めた。――恥し過ぎてすぐには顔が上げられなかった。
耳まで真っ赤になっている恋人にまた「可愛い」と囁いて、トランクスはその身体を優しく抱き締めた。
無事お化け屋敷を脱出できた二人。ユメの顔はまだ火照ったままだった。
「次はどこ行こうか。結構長くいたから、もうどこも並んじゃってるかな」
「……」
「ユメ?」
トランクスは、自分のほっぺたを触りながら俯いているユメを見下ろす。
「……なんか、トランクス変わった」
「え?」
「なんか、積極的になったっていうか……」
小さく言うユメ。
前は何かあるとお互い顔を赤くしていた気がするが、今は自分だけがこんなに赤くなっている。
その分恥ずかしさが倍増した気がする。
「え、嫌だった?」
トランクスは「変わった」と言われて少し焦ってしまったようだ。
「ううん! 嫌ってわけじゃなくて……その、私だけ照れてて、なんかずるいっていうか……」
言いながらまた赤くなっていくユメを見て、トランクスは微笑む。
「いつまたユメが帰っちゃうかわからないからね、そばにいる間はなるべく近くにいたいんだ」
(あ……)
見上げると優しく細められた瞳とぶつかった。
胸がちくり小さく痛む。
二人にとってきっとこれからも続いていく、どうしようもない痛み……。
「だから、今日は思いっきり遊ぼう!」
その痛みを振り払うかのように、トランクスは子供のような無邪気な笑顔で言った。
「うん!」
ユメもその気持ちに応えるように元気に頷く。
トランクスの近くにいると、ふと自分がこの世界の人間でない事を忘れそうになる。
いつ、元の世界に戻ってしまうか。
いつ、この手の温もりがなくなってしまうか、わからないことを……。
歩きながら繋いだ手を少し強く握ると、トランクスが笑顔で振り向いた。
「トランクス」
「ん?」
「好き」
照れながらも言うと、トランクスの顔が瞬時に赤く染まった。
その反応を見てユメは「やっぱり、トランクスだ」と、声を上げて笑った。