第22章 予定変更
ボン·クレーはモモが可愛くてならない。正にメロメロだ。
オカマと赤ん坊は、砂漠で運命的な出会いをしたそうだ。カヤンともそのときのゴタゴタで知り合っている。当時から二人は角突き合う仲だった様子。
カクも名を知る有名な砂漠の女商人と争ってモモを手中に収めたボン·クレーは海へ逃れ、何のつもりかカヤンに会いにまた砂漠へ戻った。
そして今度はカヤンまで連れて砂漠を出たのだ。
女商人や王族の手に追われながら。
行き当たりばったり、仕様もないヤツ……。
だが、どうにも憎めないところがある。ある、というか、認めるのも業腹だが満載だ。口が裂けても鼻がもげても本人に言いはしないが。
しかしだからと言ってその為にエンダに遺恨が残るような話を見過ごす訳にはいかない。ラビュを連れて行くのなら、残るエンダにそれ以上の辛い思いをさせたくはない。
エンダの家の事情は知らん。じゃが腹の煮える理由でラビュが働いていたとは思わん。
ジャンを、マリィを、ソマオールを、そしてその知己であるというボン·クレーにジュベ、何よりラビュルト本人を見れば、そう思える。
腹の黒い連中ではない。
彼らは雇っている女たちを姉妹と呼ぶ。ラビュルトは偽善めいた作り事に加担する女ではない。
エンダの仕事には意義があるのだろう。認識の浅いカクには考え及ばない意義が。
カクの仕事をラビュルトが理解出来るかはどうかはわからない。全て説明はできないし、したところでわかって貰えるかどうか。それと同じだ。
…ワシと行くのなら、その仕事も仕舞いじゃ。
この一点も大きい。家絡みでなければラビュルトが同じ仕事をする事もないだろう。
ラビュルトが何心なく行けるように、また残されるエンダが何かに煩わされないように懸念を払拭する事を置き土産にしようと、カクはそう思っていた。
そう思っていたが。
カヤンとモモを見比べる。
ボン·クレーを見る。
カクはキャップをとって頭を掻いた。
ワシャ子守りまでする気はないんじゃが…。
「おい」
「何よ!?」
カヤンと言い合っていたテンションのまま顔を振り向けたボン·クレーへ、カクは苦笑いを浮かべた。
「エンダに仕事を頼みよったヤツのところへ連れて行け。この町にゃカジノなんぞいらん。そんなモンが出来た日にゃまず泣かされるのはエンダのサロンの、ラビュの姉妹じゃろうからな」