第22章 予定変更
「パセリは青臭い」
「コリアンダーの方が余程臭いじゃろうが…ぶぁッ!?」
溜め息混じりにカヤンの淹れたお茶を呑んだカクは、思わず噴き出しそうになって口を押さえた。
「アハハハハ、変な味でしょおン、その烏龍茶ァ。ミントと砂糖が初詣の明治神宮の人出並みに入ってんのよう!ヤカンとこじゃそうやって呑むんですってェ!ハハハハハ、アチシ、それ、大ッキライなのよねィん〜」
グラスの水を美味しそうに呑みながらボン·クレーが大笑いする。
ムッとしたカヤンはフォークを置いて、見せつけるようにお茶に口をつけた。
「お前が嫌いでも全然平気だ。味音痴が何を言ったって痛くも痒くもないんだからな、ボン·カレー」
「…何よヤカン」
「…何だよボン·カレー」
「柳宗理!」
「大塚食品!」
「止めんか!」
「んぶッ!」
カクとモモの叱責に、ボン·クレーとカヤンはピタリと黙った。
「食い物の事で喧嘩するな、罰当たりめ。出されたもんは何でも感謝して頂くモンじゃ」
「自分だって噴きそうになってたじゃないン?」
鹿爪らしく言うカクを横目に、ボン·クレーがしょっぱい顔で笑いながら言った。
「予想外の味で驚いただけじゃわい」
フンと言い放ったカクをカヤンがじっと見詰める。
「…何じゃ」
「お茶、もう呑まないの?」
「…呑まんとは言うとらん」
「…ふーん」
尚もじっと見詰められて、カクは溜め息混じりにお茶に口をつけた。不味いとは言わないがあまりに甘い。
薄荷の匂いも白い髪と灰色の瞳を思わせて、今のカクには少し苦かった。
が、考えても仕方ない。
ラビュルトは今働いているのだから。
今夜にも話をしよう。切り出すんなら早めがいいじゃろう。
何せ、町を出て暮らしを変えて欲しいと、そういう話をするのだから。カクと来るというのは、そういう事。
胸ポケットの手紙を意識しながら、カクは気持ちを切り替えて目の前の二人を見た。
何だかんだとバケットを平らげるボン·クレーとカヤンの様子に、フとモモが心配になる。
離乳食は始めとるんじゃろうか。コイツらじゃ何を食べさせるかわかったモンじゃないのう…。