第20章 砂漠の民
「それ聞いてどうしよってのよ?」
ボン·クレーが眉根を寄せて口を尖らせた。不満げなオカマにカクはふむと分別くさい顔をする。
「そいつを決める為に聞いとるんじゃ。エンダがどれだけの家かわからんが、ベリーのついた厄介者を抱え込むのは賢い事じゃなかろう。あの人の良さげな家族を面倒に巻き込むような真似はしとらんだろうな?」
「やぁねィン、何言ってんだか全ッ然わかんなァい。面倒ってなァにィん?」
「今のお前さんみたいに人の目を見て話せんような真似をしとりゃいずれ起きるゴタゴタの事じゃ。目が泳ぎ疲れて溺れだしとるぞ。その様子じゃ、お前さんやっぱりロクでもない話を持って来たな?」
「人聞き悪い事言わないでよねィン!アチシは!仕事の依頼に来ただけなんだから!で、ついでに、忠告をちょっとばかし……」
「何の仕事でどんな忠告じゃ」
「……何でアンタがそんな事に首突っ込んでくんのよ?」
胡散臭げなボン·クレーにカクはニコッと笑って見せる。
「ワシは忘れ上手じゃ。さっきも言うたろう?お前さんに迷惑をかけたりせん。安心せい」
「ボン·クレーはエンダの娘にパーティエスコートを頼みに来たんだ」
気付くとキッチンからカヤンが顔を覗かせていた。ボン·クレーが頭がもげ飛びそうな勢いで振り返る。
「ちょっと!大人の話に首突っ込むんじゃないわよ!!」
カヤンはカクとボン·クレーを見比べ、ちょっと考えてからカクだけを見て続けた。
「この町にカジノをつくりたい奴がいる。町の偉い連中を集めたパーティにプライベートを装ったエンダの娘を伴って幅をきかせたいんだ。エンダはこの町では顔なんだろう?」
「カヤン!」
「随分頭がいい奴だよ。名前を出せば通らない事はない筈だけどここでは名乗りたくないらしい。だからエンダを使う」
「黙んなさ…ぅぐ…ッ」
ボン·クレーの口を大きな掌でバチンと塞いで、カクはカヤンをじっと見返した。
「真っ当な話じゃなさそうじゃな。小賢しい茶番の胴元はどこのどいつじゃ」
眉をひそめたカクにカヤンは薄っすらと笑った。
「私でさえ知っている力の有る名前だから、あなたは聞かない方がいいと思うよ。……ボン·クレーはそいつと取り引きしたんだ。私とモモの為に」
「ほう?それを台無しにしかねないのに、カヤン、お前はこうもペラペラとワシに話をしてしもうていいのかの?」
