第20章 砂漠の民
「何じゃ、いい声が出たのう。やっぱり男なんじゃな、お前さん」
「はん?オカマナメてんじゃないわよぅ?これでもこちとら漢だっつのよ!コラ!」
「面倒な生き方しとんじゃのう。オカマで漢かいな」
「おうよ、誇り高き茨道よ」
ぐっと力瘤をつくって見せたボン·クレーに、カクは妙な顔をした。
「まあ、それはそれで歩きがいのある道なんじゃろうな。ワシにゃようわからんが、頑張ったらいいわい」
「おぅ?何よぅ、急に物分り良さげになっちゃって、さてはいよいよアチシの事……」
「…そんなんじゃから道に要らん茨が生えるんじゃ。ちっと自省せい。自制もせにゃならんぞ」
「ジセージセーうっさいわねン!で?何よ、アンタの聞きたい事って。アチシこれから出掛けなきゃないから、忙しいのよぅ」
「うん?ああ…」
カクは盆の窪に手をあてて、ちょっと俯いた。
「…ラビュルトの…」
「はあ!?急にちっさい声になっちゃって何よ!?聞こえないわよン!?」
「……ラビュルトの」
「ラビュが何だってのン?ハッキリ言いなさいよう、イライラするわねィん!」
「ラビュルトの!誕生日を!教えてくれんか!!」
「ぅおッ、馬鹿デカイ声出してんじゃないわよッ、ビックリすんじゃない!!」
「知っとるんか!」
「6月1日!」
「恩に着る!」
「どういたしまして!」
「……」
「……」
「…いや、本当に恩に着る。忙しいとこすまんの」
「そんな事わざわざ聞きに来たっての?アンタ暇なのねィん……」
「……いや…」
腕組みしてカクはボン·クレーをじっと見た。
「そいつも大事な用じゃあるが、もうひとつ」
「……何よ」
「お前さん、結局何の用があってエンダの家を訪ねたんじゃ?」
「ん?」
ボン·クレーの目が泳いだ。
「お尋ね者のオカマがどうして娼家に顔を出さにゃならん?旧知の仲を温めとる場合でもなかろうよ。まして訳ありの瘤付きとありゃ尚更じゃ」
「駱駝連れだけに?」
「……バカタレ。ワシャ真面目に話しとるんじゃ。笑わせるな。削ぐぞ」
「鼻を?」
「……あのなぁ…」