第20章 砂漠の民
嘘偽りなくどーでもよさそうにボン·クレーがガサガサとバケットの包みを開ける。
「ちょっとォ、サラダかデザートでもつけなさいよぅ!気が利かないわねィん、もう!」
「やかましい。欲しけりゃ自分でつくれ、この人攫い。スイートなんじゃ、キッチンくらい付いとろうが」
「ひ、人攫い!?ジョーダンじゃなーいわよーう!人聞きの悪い事言ってんじゃないわよ、鼻!!」
「鼻は止さんか。ここに来て聞き飽きたわい。ワシャ今まで周りに気遣われとったんじゃな。こんなに鼻鼻言われたんは初めてじゃ、忌々しい」
「裸の王様ってヤツじゃないのォ?気になんない訳ないじゃなーい?ぶ、がっはっはっはーッ!」
「大口開けて笑うな!気の悪い奴じゃのう!」
「私がつくる。ボン·クレーの料理は大雑把過ぎてお腹に悪い」
カヤンが場を立ち去る口実が出来た事にホッとしたように言った。
「何でもかんでも香辛料塗れにすんじゃないわよぅ!?」
「わかっているよ。お前の分には味を付けない」
「ちょっとォ!?」
「冗談だってば。うるさいな。黙って座っていろよ。そんなに騒いでいたら、カクが話を切り出せないじゃないか」
しかめ面でキッチンに引っ込んだカヤンを見送って、カクは駱駝の鼻面を掻いた。
「そこの赤ん坊もカヤンの縁か」
「このべべはアチシのファム·ファタールよン!誰も縁っちゃないのン!アーチーシーの縁!ア·チ·シの!」
「くどいのう。ファム·ファタール?何じゃそら?」
「アチシの大事な天使ちゃんて事よン!赤ん坊呼ばわりは止してよねィん!モモってかンわいらしい名前があるんだから!」
「そのモモも攫って来たんか」
「アンタどんだけアチシを誘拐犯にしたいのよン!?ジョーダンじゃなーいわよーう!捜査に行き詰まった刑事か何かみたいに絡むのは止めなさいよねィン!ダッサ、ダッサー!」
「ホントやかましいのう、お前さんは。耳と頭がイカれそうじゃわい」,
「うるさいわね!アンタは鼻の心配してりゃいいのよ、耳と頭より深刻よン、その鼻!」
「……もっぺん鼻っちゅうたら、あそこのベビーベッドに収まるくらいに畳むぞ?」
「畳む?このアチシを?いーい度胸じゃなーい?やれるモンならやってみやがれ?あ?」