第15章 お茶会
「そういうもんがおるなら大事にするんじゃな。余計な事に頭を突っ込まんで大人しく引っ込んどれ。一度ベリーの値がつくと先は長いぞ。大事なもんを悲しませんように気を付けい」
立ち上がったカクにボン·クレーが目をすがめる。
「…アンタもね。ラビュは下品で女だけど、まあいいコよ?泣かせんじゃないわよ」
「泣かせたかないがようわからん。女はどこが泣き所かサッパリ読めん」
馬鹿正直に顔をしかめて言ったカクに、ボン·クレーはキョトンとしてから大笑いした。
「アンタバカねィン!そんなのわかる訳ないじゃなーい!こっちは男なんだから!」
「やっぱり男なんじゃな、お前さん」
「あらヤダ!男じゃないわよう。お·と·こ。漢ね、漢」
「ややこしいのう」
「しょーがないじゃなーい?訳わかんないのはみんな一緒って事よぅ。ねー、しょーもないわぁ」
「……お前さん、このうちとは付き合いの深そうじゃな」
聞きたい事がある。が、第三者から聞くべきことではないのもわかっている。
カクは言い淀んでまたキャップの庇を掴もうとして空振りした。
どうにも調子が狂う。
苦笑いして盆の窪に手を当てる。
「ソマオールの前で要らん事を言ったらいかんぞ?年端のいかんもんは良いも悪いもすぐ真似しよる。年長のもんが分別をつけにゃならん」
「あーん?何言ってるかわかんなーい。メンドくさーい」
「わからにゃわかるまで削いでやるわい。鼻か?耳か?先ずは前髪かのう…あんまり真っ直ぐで反って曲がって見えよる。問題じゃな。えらい事気になるわ」
「前髪切ったってアチシに変わりはないわよ⁉バカな事考えてないで聞きたい事があんなら聞きゃいいじゃない⁉何⁉何なのよぅ、そのアチシを乗せたくなくて仮病使ってるピンクの睫毛の駱駝みたいな物言いたげな顔⁉」
「また訳のわからん事を言う…。何じゃそれは。ワシャ駱駝なぞ見た事もないわい」
「見たいン?何なら譲…」
「ワシャ失業中の借家住まいじゃ。ペット厳禁」
「女は連れ込みOKなんでしょ?いーじゃなァい、駱駝の一頭や二頭…」
「二頭もおるんか?駱駝が⁉…何をやっとるんじゃ、お前さんは?飼い切れんならペットに手を出したらいかんぞ」
「船で動けんなら問題ないのよ。今は水慣れしないだの船酔いだのって駄々こねやがるガキがいるモンだからぁ…」