第15章 お茶会
カクはにっこり笑って頷いた。椅子に深く腰掛け直してティーカップを手に取る。
「あらん?トイレはいいの、お鼻ちゃん?」
「心配かけてすまんのう。じゃが安心せい。治ったわ」
カップに口だけつけてソーサーに戻し、長い足を組んでテーブルに肘を付く。
エンダの一家はジュベを見送りに席を外し、今テラスにいるのはカクとボン·クレーの二人のみ。
「ワシャ言ったらお前さんにゃ興味ない」
「あらン?そぉお?興味深々かとばっかし思ってたわン。残念ねィん」
これまた長い足を組み、テーブルに肘をついたボン·クレーが応える。
「でもまぁ、いいわよン。アチシもアンタどころじゃないのよね。忙しいのよぅ。手が空いてりゃねえ、アンタと遊んたげてもいンだけどねィん?」
「いや、頼んで要らん」
サバサバッと首を振り、カクは再びにっこり笑った。
「じゃがまあ良かったわい。お互い構いつけんですむな。ワシも忙しいとは言わんがチクと用が出来たからの。お尋ね者に拘り合う暇はないんじゃ」
「フン?ま、アチシもこれ以上アンタに突っ込む気はないわ…て、あらッ、やだーン、アチシったら、突っ込むなんて、もおォ!本音が出ちゃった!ガハハハハ」
「…ハハハ。蹴り飛ばすぞ?おお、鳥肌が立ちよった。お前さんは冗談が上手いのう」
「あら!ジョーダンじゃないなーいわよーう?ここンとこ子守りでヨッキューフマンなのよーう。やんなっちゃうン」
「さっきから気になっとるんだが、お前さん、どこぞから子を攫ったか?なら早う親元に返してやれ。女子供を泣かす奴は好かん」
真顔で言うカクにボン·クレーは顔をしかめた。
「なーんでこのアチシがそんな事しなきゃないっての?ジョーダンじゃなーいわよーう。どっちかったら人助け!ゴタゴタに巻き込まれてるガキを匿ってやってんのよ。仕方なく」
「ほお。お前さん、こう見えて子供好きか」
「ぜーんぜん!アチシの大事な天使が巻き込まれそうなんで仕方なくよ、仕方なく」
「天使?」
「そおよ。アチシには天使がいんのよ。可愛くって可愛くって、そこらのお宝なんかぜーんぜんメじゃない大事な大事な天使ちゃんが」
「そうか」
見極めるようにボン·クレーを見やっていたカクはフッと表情を弛めて頷いた。