第15章 お茶会
「何をどう聞けば今のが自慢に聞こえるんじゃ。お前さんらの話はワシにゃサッパリわからん」
「はは、そらあんさんが幸せな証拠だ。面倒だぜ、わかるようになっちゃ」
ジュベがソマオールに手を伸ばした。
「ソマオール、腹が落ち着いたんなら畑に行こうや。土産を物色したいんだよな。いいだろ、マリィ?」
「構わないわよ。好きなだけ持って行きなさい」
「悪ィね。貰ってくよ。で、俺、そのまま帰るから。茶、旨かった。ご馳走さん」
そう言って手を上げたジュベに、ラビュルトが立ち上がった。
「帰っちゃう気?泊まって行かないの」
「泊まらんよ。俺にも商売があるからさ。またな、ラビュルト」
顔をしかめながら頬と頬を寄せる挨拶を受け、ジュベはラビュルトの肩をポンと叩いた。
「男前のアニさんと仲良くな。山じゃ気を付けろよ。ナメてると怪我するからな」
「ありがと。ジュベも素敵な山猫と仲良くね。また来てよ。待ってるから」
「まぁそのうち、気が向いたらな。あんま期待すんなよ」
次いでジャンやマリィと挨拶するジュベを見ながら、カクは隠しの上から封書に触れた。封蝋のゴツゴツした手触りに、頭がスゥっと冷える。
「···何おっかない顔してンのよ、アンタ」
フォークに刺したクレープを齧ったボン·クレーが、眉を上げてカクの様子を見咎めた。
「いや···ちくと腹が痛うなった。ちと憚りに行って来る」
「ちょっとォ、バカな真似は止しなさいよぅ。ソマっちの前でジュベを問い詰めようってのン?止め止め、そんな事したってなーんにもなんないわよーう。ソマオールがビックリするだけだっての。ジュベはねぇ、アチシたちとは水が違うんだからン」
「ほお?お前さん、何でそんなこと言い出しよる?ワシャ憚りに行きたいだけじゃ。茶を呑み過ぎたかの?···じゃがまあ···」
カクは口元だけで笑ってボン·クレーを眺めた。
「気になる事があるなら聞かんでもないわい。何ぞ引っかかるモンでも見たか聞いたかしたのかの?」
「えぇ〜?ぜーんぜん。面倒は沢山だって言ったじゃなーい?アチシは余計な事は見ないし聞かないし、言わないわよーンだ」
シッシッと馬鹿デカい手を振って、ボン·クレーはにんまり笑った。
「はあ、そうかいな」