第15章 お茶会
カクは渋い顔で額を擦り、傍らでニコニコとタルトを頬張るソマオールを見下ろした。
「あんな大人になったらいかんぞ」
「何で?アタシ、ベンサム、だーい好きだよ?」
満面の笑みで返すソマオールに、カクは首を振る。
「好きなのは構わんが、真似したらいかん」
「オカマデァッシュ!!!」
「···おい、どうするんじゃ。お前さん、あたら若い芽に毒水をぶっかけっ放しじゃぞ」
「あーん?知らなーいン。アチシ、ガキの面倒はもう間に合ってんのよねィん。可愛〜い天使ちゃんで手一杯なのン!ウフン!」
にやにやと言ったボン·クレーにジョンとマリィが顔を見合わせ、ラビュルトは手を打ちジュベが口に含んだタルトを噴きかけた。
「ベンサム、君、結婚したのか!驚いたな!」
「おめでたい事。お相手はどんなコなのかしらね。あらあらまあまあ、やだわ、もう!そうと知っていればお祝いしたのに!」
「凄い!抱っこさせて!!駄目って言っても絶対するわよ!何処にいるの⁉アンタのベベは?アンタそっくりだったりするの⁉うわぁ、うわぁ、可愛いだろうなぁ···」
「本気か?びっくりだな。いやぁ、確かに凄いやな、こら」
口々に騒ぐ皆にボン·クレーはだあと口からお茶を吐き出した。
「ちょっ、バ··ッ、誰が子持ち⁉アンタたちバカじゃないの⁉人を何だと思ってンのよ⁉アチシはね!100%ブッチギリのオカマなの!正真正銘の純潔なんだから、アチシのチン···ぶべっ!かはッ、ちょっと、何すんのよ鼻!!ポンポンポンポン気安く殴んじゃないわよ⁉幾ら好きの裏返しだからってねッ、いい加減許さな···アガッ」
「何が何の裏返しじゃ!!ひとりで勝手に裏返っとれ!子供の前で要らん事を言うなと言うとろうが!口を縫い合わすぞ、バカタレが!!」
「ベンサムお嫁さんになった⁉お婿さんは誰?」
ソマオールが無邪気に言って、カクは額に手を当てた。
「ソマオール、ありゃ見ての通り男じゃ。嫁さんにゃひっくり帰ってもなれやせん。万一なるとすりゃ婿じゃ」
「何で?ジュベはどっちだっていいって言ったよ?」
顔を上げるとジュベと目が合った。
ジュベの大きな黒い目が細まり、紅い口がスゥッと三日月の形に持ち上がって意味有りげな笑みになる。
···何じゃ···
カクは片方の眉を上げてジュベをじっと見た。何かを確信したような目が見返して来る。