第5章 こんな二人
「脱いだら着るわよ、そりゃ」
「いいから脱いどけ。うむ・・・いや、着た方がいいのう。うん。早く着んか」
「着ろって言われると不思議と着たくなくなるわね・・・」
「乳を晒して飯を食う気か?見苦しいのう・・・」
「・・・鼻をへし折るわよ?」
「・・・頭に墨をぶちまけるぞ?」
「何?アタシの頭に文句があるっての?」
「お前さんこそワシの鼻に何の文句があるんじゃ。鼻鼻しつこいわ。こりゃワシのチャームポイントじゃ。つべこべ抜かすな。段々へこんでくるじゃろうが!」
「素敵な鼻ね」
「遅いわ」
「肉あるよ?肉好きなんでしょ?生じゃないわよ?はい、あーん」
「いらんわい」
「背骨折れちゃうわよ?」
「鼻の次は背骨か!ワシャお前さんとおったらロクなメに会わんのじゃないか?今からイヤな予感しかせんわい」
「アハハ、大丈夫よ」
「何が」
「クライマーよ、アタシは。応急手当てはお手の物なんだから。治るまで頑張っちゃうわよ」
「応急手当てしか出来んのじゃ意味なかろうが」
「とりあえず大丈夫」
「・・・贅沢言うようじゃが、ワシャ怪我したらちゃんと治したいんじゃ」
「じゃあ医者に行けば?失礼ね」
「何で怒られにゃならんのじゃ。普通に全うな事を言うただけじゃぞ、ワシャ」
「アタシの手当てじゃ不足なんでしょ?」
「・・・応急手当て自体何か不足しとるとは思わんのか、お前さんは」
「仕方ないわよ。応急なんだもの、飽くまで」
「わかっとるなら怒る事なかろう。ワシャやっつけ手当ての繰り返しで生殺しにされるのはごめんじゃ」
「やっつけ?ひどい事言うわね」
「お前さんが山から墜ちたらワシが応急手当てしてやるわい。治るまで」
「冗談でしょ?医者に連れてってよ、ちゃんと!」
「・・・ひどいのはどっちじゃ」