第5章 こんな二人
「山の事故を甘くみるんじゃないわよ?滑落は本当に怖いんだから」
真顔で告げるラビュルトに、真顔で答えるカク。
「それについちゃワシも覚えがないじゃない。じゃから怪我自体甘くみたらいかんのじゃ」
ラビュルトは目を丸くして、跳ね上がった。
「うそ、アンタもクライマーなの!?ホントに!?」
「いや、ワシャ山風じゃ」
キャップの庇を上げてカクはフォークを取り上げた。
「山風?」
椅子から腰を浮かしたまま目をすがめたラビュルトに、カクは頷いて笑った。
「一緒におりゃいずれわかるわい。・・・食うてもいいか?ワシャ本当に背骨が折れそうじゃ」