第5章 こんな二人
「・・・ワシャこんなには食えんぞ」
目の前に並んだ料理の山に、カクは呆れ顔をしてラビュルトを見た。
「お腹減んないの?あんだけヤッて?」
サラダにのった二十日大根を手掴みで摘まんだラビュルトが、きょとんと不思議そうに見返して来る。カクは額に指をつけて溜め息を吐いた。
「口を慎まんか。何なんじゃ、ヤるだの何だの、もう少し言い方があるじゃろう」
「何よ。じゃ何て言ったら良いわけ?」
「ワシに聞くな。そんなこた知らんわい」
「・・・さっきアンタ、アタシと何をした?」
「・・・知らん」
「知らん?何て事言うのよ、バッカじゃないの?」
「口を慎めと言うとるじゃろうが!聞かん女じゃな!」
「ふん。アンタが鼻を慎んだらアタシも口を慎むわよ」
「・・・女にゃ手をあげんが、何なら投げ飛ばすぞ?この口減らずが」
「口なんか一個しかないのに減ったらなくなっちゃうじゃない。そしたらどこで話せってのよ?鼻?」
「お前さんの頭はどうなっとるんじゃ?鼻で話す化けもんとヤッたのか、ワシャ!?」
「あ、ヤッたって言ったね。今アンタ、ヤッたって言ったわよ?じっちゃんの鼻にかけて!」
「鼻から離れんか!マガジンよりジャンプじゃろうが!そもそも鼻じゃないわい!名、名じゃ!」
「ハはナシ?」
「ナシじゃ!」
「何のハナシよ・・・アハハハハハッ」
「・・・情けない。今の今まで女気なしでやってきたのに、何でこんな女に引っ掛かったんじゃ、ワシは」
「女気なしでヤッて来たって事は右手が恋び・・・」
「黙らんか、馬鹿たれ!際限なく下品な事を抜かすな!大体ワシャ左利きじゃ!」
「右が左になっただけじゃないの」
「・・・ワシャもう知らん。いただきます」
「はい、召し上がれ」
ニコッと笑ってラビュルトが両手を広げる。
「・・・何をやっとるんじゃ、お前さんは」
「うん?だっていただくんでしょ?」
「・・・何をじゃ」
「アタシ」
「ワシャ生肉は好かん」
「ふうん・・・」
「おい。何をやっとるんじゃ。服を脱ぐな。着たばっかりじゃろが」
「また着るからいいのよ」
「ワシは脱がんぞ」
「そういうヤり方もあるよね」
「・・・・・・ほう?」
「興味あるの?ふーん」
「おい。何で折角脱いだものを着るんじゃ」