第27章 アタシの男
「いずれにせよ、ここにいる間俺はお前らエンダのゲストだ。仲良くやってかねえとな。……まぁ勿論俺には俺で考えがあるがよ」
アブサロムは会場を見回してフッと笑った。
企みのありそうな顔。
そう言えばこの男はライターだったとラビュルトは腑に落ちた。
仕事をする気でいるのだ。
ドフラミンゴという七武海の一員の、小粒だが決して無益ではないネタを拾おうとしている。
「なあ、オイラの女になんねえか?悪いようにはしねえぞ?」
「そういう事ね」
ラビュルトは肩を竦めて苦笑した。
「先の心配なんか要らないわよ。…アタシ、この町を出るから」
「は?」
ポカンとしたアブサロムに、ラビュルトはにこっと取って置きの笑顔を見せた。
「しなきゃいけない事が出来たのよ。アタシはアタシの古巣を見に行かなくちゃならないの」
「古巣?」
アブサロムの顔に思いの外慎重な表情が浮かんだ。ラビュルトは朗らかにその頬を軽く叩いて、会場を見回した。
「そんな顔したって駄目よ。アンタに仕事はさせないわ。ドフラミンゴから聞いてるでしょ?この町はなかなかの避暑地なんだから」
幼い頃から顔見知った大人たちを目で確かめながら、ラビュルトは大きな口の端をぐっと持ち上げた。
「ブン屋の記事を揉み消すのなんかお手の物よ。古くて遊び出のある田舎町にはそれなりのやり方があるの。まして七武海と町に関わる話なら、多分アンタにも私にも手繰りかねるやり方があるでしょうね。田舎じゃ亀の甲より年の劫ってのが未だに断然幅を利かせてんだから」
「……古巣って何だ?町を出るお前が俺の相手を務める必要あんのか?ねえだろ。何だそりゃ」
「この茶番を始めた当人に聞いたら?アタシに聞いたってわかんないわよ」
答えたラビュルトの目が、動くのを止めた。
一点を見て煙るような瞳を瞬かせる。
「おい」
黙り込んだラビュルトを訝しんでその視線を追ったアブサロムは、目を見開いて口を噤んだ。
白いスーツ姿で赤ん坊を抱いた男とキャップを被った男が、年の頃十二三の子供を伴って会場に入って来た。
二人の男に見覚えがある。もっと言えば、赤ん坊と生意気そうな子供にも。
「知り合いか」