第27章 アタシの男
知った顔の多いパーティなのに皆今ひとつ余所余所しい。互いの顔色を伺うように距離を保ちながらの談笑がそちこちで交わされている様が苛立たしい。
…知らない人の中にいるみたい。
インディゴブルーのドレスの裾を見下ろして、ラビュルトは溜め息を吐いた。
…横にいるのも知らない人だし。
正真正銘知らない相手なのにこの会場の誰より馴れ馴れしい。
「お前んとこの町の連中はなーんか人見知りだなぁ。何で遠巻きにしてんだ?バンバン話しかけてくりゃいいのによ」
キョロキョロしながら呑気に言うアブサロムをチラと見やり、ラビュルトは僅かに眉をひそめた。
この墓フェチは何をどこまで知ってここにいるのやら。
「話しかけ辛いんでしょ。色んな意味で」
「色んな意味で?そんな沢山理由があんのか。ふん?」
面白そうにニヤリと笑ったアブサロムは、通りがかったウェイターからシャンパンのグラスをふたつ取り上げてひとつラビュルトに渡した。
「成る程な」
「何よ?言っとくけど理由のひとつはアンタのその見た目だからね」
受け取ったグラスを右から左へ、テーブルの上に置いたラビュルトがますます深く眉根を寄せてアブサロムを睨みつける。
アブサロムは自分のシャンパンを空けるとラビュルトが置いたグラスを取り上げて、これもグイと呑み干した。
「いや?面白えなと思っただけだ」
「好奇心猫を殺す」
「ん?ああ、あるな、そんな諺」
「念願の墓場行きになんのはアンタの勝手だけどこのパーティがすんでからにしてよ」
「お前はこのパーティがすんだらどうすんだ」
アブサロムの言葉にラビュルトは首を傾げた。
「何?」
「何って、俺は当分この町に逗留すんだぜ?羽振りのいい出資者として町の発展に貢献する訳だ。観光客の退屈を凌ぐ遊興施設のオーナーとしてな。エンダは新しい町の有力者と親しい訳だ。まぁカジノと高級娼館は相性がいいと言っていいよな?お前の親父はあちこち顔が利くらしいし?互いに有益な関係だな」
「問題はアンタが羽振りのいい出資者にゃ見えない事ね」
「馬鹿言え。んな事は大した問題じゃねえ。何せこれはドフラミンゴの暇潰しなんだ。仮にもヤツの代行役の俺を誰がくさすもんかよ」
「何威張ってんのよ、バッカみたい」
「少しは威張ってねえと金持ちらしく見えねえだろ?」
「情けない事言うわねえ」