第26章 賽は投げられた
「……全ッ然根拠のない事を何でそんなに自信満々に言えるのかなあ…。オカマと居ると万事心配ない訳?…私はお前こそ心配でならないけどな、ボン·クレー」
「しっつれいねィん!アンタに心配される程落ちぶれちゃないわよン!」
「生まれたときからずっとこうなんだろ?落ちぶれる余地もないじゃないか」
「…何なら叩き返してもいいのよン?虹色駱駝ンとこに?」
「…止めてよ。ピンク駱駝の方が七倍マシだ」
「虹にピンクなんぞあったかのう…?」
「…赤・橙・黄・緑・青・藍・紫…。あれ、ピンクはないな」
「あらン?虹にピンクが入ってないなんてあーりえないわよーぅ。アンタら大丈夫なのン?笑われちゃうわよン?」
「…やっぱり私はお前こそ心配だよ、ボン·クレー」
「だから!何っでアチシがアンタみたいなガキに心配されなきゃなんないの!心配されてる自分が心配になるっての!」
「それでいいと思うぞ。お前は少し自分の心配をした方がいい。ワシの鼻やらカヤンの駱駝より、余程心配のしがいがあると思うがのう」
「ヤな感じ!はー、何かすっごくやる気なくなったわぁ!もぉこれだから男はヤなのよン!言いたい事言いたい放題でデリカシーってモンがないわァ。アチシなんか根がデリケートだからすぐ傷ついちゃうってのに、ホンットジョーダンじゃないなーいわよーう」
「言いたい放題はお前じゃろうが。誰がデリケートじゃ。デリケートに謝れ。まるきり使い方を間違っとるわい」
「はははは」
「笑ってンじゃないわよッ、何が可笑しいっての、この笑い袋!」
「何が可笑しいってお前が丸ごと笑えるんだもの、仕方ないじゃないか」
カヤンという少年をカクはまだよく知らない。
小生意気なところはあるが賢しく大人びた子供。何らかの事情を抱えていているのは明白でそのせいかあまり人当たりが良くない。
しかしあまり彼を知らないカクの目にさえ、ボン·クレーといる事が彼に悪くない影響を及ぼしているのが覗える。
不思議なモンじゃな。
恐らくは王族に属する気位の高い少年が、明け透けなオカマに気を許して楽しげに笑っている。
わしにしても。
つい数日前まで知りもしなかった女の為に動いている。そう、数日前まで知りもしなかったが、今はもうなしではいたくないラビュルトの為に。