第25章 パートナー(仮)
「……何やってんだ、アイツらは」
パーティ会場のモニターを片肘付いて眺めていたドフラミンゴか呆れ声で呟いた。背後に佇むジャンに、振り返りもせず話し掛ける。
「オメェ、娘の教育がなってねえぞ。アイツにゃ慎みってモンがねえ」
ジャンはモニターを一瞥してくしゃみでも出そうな顔をしたが、既の所で口を拭って微笑した。
「いいえ、慎み深い娘ですよ、あのコは」
「俺にゃそうは見えねェな」
面白そうに口元を撫でて、ドフラミンゴは傍らのグラスを手にした。
「まぁあれくらい気が強えとなると、手懐けんのは面倒だろうよ。見物だぜ」
氷を鳴らしてグラスを傾けたドフラミンゴに、ジャンが眉をひそめる。
「どういう意味です?」
「気にすんな。俺にもお前にも関係ねえ話だ」
「…どういう意味です?」
フッと鼻を鳴らしたドフラミンゴが顎を上げてジャンを促した。
「さぁ、そろそろ出番だ。支度してラビュルトに顔を見せてやれ」
二度繰り返した問いの答えを貰えぬまま切り替えられたジャンは眉をひそめた。
「今更私が顔を出したところで何になります。あなたはこの町の有力者をほぼ抱き込んでいる。そうでしょう?娼家の主がしゃしゃり出る幕はありませんよ」
「確かにオメエはこの町じゃ娼家の主でしかねえ。けどそこが曲者でな」
トレイに伏せた新しいグラスを反して生のブランデーを注ぎ、ジャンに差し出しながらドフラミンゴが笑う。
「仕事柄、オメエはこの町の誰よりも顔が広え。上からも下からも一目置かれてて、思いがけない連中にも繋ぎがとれる」
「何の話…」
「あの馬面のオカマ」
グラスを受け取ろうとしないジャンの膝を爪先で蹴り付けて、ドフラミンゴは長い指先にこめかみと頬を預けた。
「あんな知り合いが他にもあるんだろ?」
「知り合いは沢山いますよ。あなたが期待するような繋がりのある相手はいませんが」
渋々グラスを受け取りながら躱すジャンにドフラミンゴは自分のグラスを掲げて見せた。
「やり方は教えてやる。顔が広えのはいい事だ。オメエみてえな商売をしてるヤツァ特にな」
「必要ありませんよ」
「好意は素直に受けるもんだぜ?金と力はあって困るもんじゃねえ。うちの身内が世話になった礼をしようってんだ。俺は義理堅い男だからな」