第23章 ドンキホーテ
「何がそれでだ?」
ドフラミンゴが肩をすくめる。
ラビュルトは豪奢な部屋の中を見回して微笑した。
「町で一番のホテルの、一番いい部屋。でもアンタにはここも粗末なモンなんでしょうね」
「おいおい、この町は田舎だが貧乏じゃねえ。ハイシーズンにゃ随分金が落ちる場所だ。目立つこたねえが、儲かってるよな?」
「さあ。アタシにそんな話されても困るわ。アタシは田舎者の娼婦だから」
「エンダのとこじゃそれなりの客を捌いてる筈だ。下品な事から上品な事まで、お前らに出来ねぇ話はねえだろう」
「わかってる事をわざわざ人に聞かないでよ」
しかめ面のラビュルトにドフラミンゴは口角を上げる。
「ここは海路も陸路も色んな場所に上手く繋がるいい土地だ。しかも稼ぎや客筋程派手に見えねえ田舎と来る。どうだ?お前ならこんな町でどう儲ける?」
「貧しくはなくても取り立てて資源がある訳でもないとこよ?儲けるとすれば人の出入りを利用してカジノか密売くらいが関の山だわ。ここで稼いだって高が知れてる。アンタらには蚤の糞みたいなモンでしょうよ」
「そうだ。その通り。わかってるじゃねえか、ラビュルト」
満足げに再びソファーに身を預け、ドフラミンゴは顎を上げた。
「ここで儲けが上がっても、俺にゃ関係ねえんだ」
「……アンタ何しに来たのよ」
「この町のこたァ行き掛けの駄賃だ。誰にも知られねえ自分の縄張りを幾つ持ってるかは、ソイツの技量を計るのにゃ欠かせねえからな。いくらあったって困りゃしねえがそれだけだ。別にどってこたねんだよ、この町自体は」
ゴンとテーブルに足を乗せて、ドフラミンゴは大きく息を吸った。
「探したぜ、ラビュルト。何せ生きてるかどうかもハッキリしてなかったしな。樽詰めで海に流されて、よく生きてたもんだ」
「そうね。大したもんだと思うわ。生きてたアタシも、そんな真似やらかしたバカも」
「そう言うなよ。仮にもお前の父親だ、いくらバカだって許してやんねえとな?そうだろ?」
「…そんなバカな父親は要らないみたいよ?アタシ」
「お前の為に立派な縁談を持って来たんだぜ?泣ける親心じゃねえかよ。お前は天竜人と結婚するんだ。良かったなあ、ラビュルト」
「何言ってんの」
ラビュルトは呆れ顔で立ち上がった。
「ホンット何言ってんの?馬鹿らしい」