第2章 翌日の市場で
「アンタ変だけど真面目ね。いいじゃない!」
「ほめられとるんだかくさされとるんだかわからん。笑うな」
「ごめんごめん。ほめてるのよ、これでも」
「大口開けて笑っとったら、綺麗な顔が台無しじゃぞ」
「大笑いする女はキライ?」
「いや。ワシャ好きじゃよ」
「じゃ、いいじゃない。良かった」
「何が良かったんじゃ」
「え?何がって?」
「・・・お前さん、人と話すときは適当にしとったらいかんぞ・・・」
「適当?そんな事ないわよ、全然」
カクの腕を引っ張って、ラビュルトは上機嫌で歩き出した。
「何食べようか楽しくなってきただけ」
「そら食い物にかまけて会話が疎かになっとるんじゃ」
「アタシ、話しながらご飯食べるのすきだけど?」
「わかった。お前さん、腹が減って血糖値が下がっとるな?変に話が噛み合わんぞ」
カクは強いて立ち止まり荷物をラビュルトに押し付けると、ポケットを探った。
「ワシャ話の通じん相手と歩くのはごめんじゃ」
色とりどりの飴を並べた出店で小袋ひとつ分買い求め、小銭を払う。
自分とラビュルトの口に小振りの飴を幾つかまとめて突っ込むと、キョトンとしているラビュルトの頭からキャップを取り上げた。
「で?何処で何を食うんじゃ?ワシャ腹が減って背骨が折れそうじゃわい」
キャップを被って白い頭を大きな手で押しやると、髪から薄荷、口元から洋梨と葡萄を香らせながら、笑顔のラビュルトが弾むように答える。
「そんなにお腹が減ってるんじゃ、フルコースかな?違う?」
「気取った店じゃ腹が膨れんわ」
「アタシだって話も出来ない上品な店に行く気はないわよ。大体お互いこのカッコじゃ、そんな店入れる訳ないじゃない」
「そら良かった。ワシャ今日は寝るまで着替える気はないからの」
再び荷物を取り上げ、カクは目顔でラビュルトを促した。
「この大荷物はどうするんじゃ?持って歩かせるつもりか?」
「持って歩きなさいよ。アンタのお腹に入るモンなんだから」
カクと並んで大股に歩きながら、ラビュルトは当然、と、顎を上げる。
「何じゃ、こりゃ昼飯の材料じゃったか。お前さん、大食らいじゃのう」
呆れたカクにラビュルトも呆れる。
「ひとりでこんなに食べられないわよ。アンタとアタシの二人分」
「お前さんが作るのか」