第70章 デリバリーサンタ 一松
一松サンタはベッドに腰を下ろし、不機嫌全開なため息を吐いた。
もの言いたげな目がわたしに突き刺さる。
「…もしかして、サプライズで会いに来てくれたの…かな…?」
「……」
紫のサンタ帽が、微かに揺れた気がした。
頷こうとして躊躇ったのかもしれない。
何かが入っているのであろう、白い袋をキュッと握りしめている。
(どうすれば機嫌直るかな…)
「ごめんね…会いに来てくれてすごく嬉しかった。けれど、明日デートする約束だったから、まさか今夜来ると思わなくて驚いちゃって…」
こういう時は、下手に取り繕わず正直が一番。
って思ったけれど、果たしてどうなるかな?
「……寝てたんでしょ?」
「え?うん」
「……じゃあ寝なよ…邪魔、しないから」
睡眠妨害しないなら何しに来たんだろう。
ズイとベッドの端に座り、毛布をめくる一松サンタ。
「えーと、一緒に…寝る?」
「……」
ああ、分かりやすい。
耳まで赤くしている。
「……寝ない」
プイッとそっぽを向いてしまった。
わたしはベッドに潜り込み、サンタの膝に頭を乗せる。
「お、おいっ!?何許可なくおれの膝に!!」
「ねぇ、機嫌直して?一緒に寝ようよ?」
「は?誘ってんの?淫乱…」
私を見下ろし、ニタニタとイヤラシイ笑みを向けてきた。
冗談だとしても、『淫乱』の二文字はひどいんじゃないかな。
大体、真夜中の寝室に突然押しかけたのは一松くんのくせに。
そう思ったら、ちょっとだけ意地悪したくなった。
「もういい」
「え?」
「おやすみー」
「主…?」
部屋の電気を暗くして布団を掛け、一松サンタに背を向けて横になった。