第70章 デリバリーサンタ 一松
主人公視点
眠っていたら、ふと何かの気配に気づき目を開けた。
不気味な窓を叩く風の音。
そして、真っ暗な部屋にポツンと人影。
人影は、ベッドに横たわるわたしを舐めるように見ている…ような気がした。
金縛りで幽霊を見る事は、10代の頃頻繁にあった。
あれが、本物の幽霊なのかただの夢だったのかは未だに分からない。
でも、今私は起きている。
意識はハッキリしているし、身体も動かせる。
夢なんかじゃ、ない。
という事は、本物の幽霊もしくは不審者だ。
幽霊より生きた人間の方がはるかに恐ろしい。
恐怖で歯がカタカタ震える。
(逃げなきゃ…)
震える足でベッドから降り、リビングへ向かおうとすると
「……おい」
腕を掴まれた。
「キャーーッ!」
咄嗟に電気をつけ、足元にあったスリッパで影の主をペチンと叩く。
「……」
「あ……ごめん」
そこには、ブスッとした紫のサンタさんがいた。
「いや、フツー分かるでしょ?」
分からなかった。
だって、禍々しくおどろおどろしいオーラが、部屋一面立ち込めていたんだもん。