第69章 ※デリバリーサンタ チョロ松
(すごい…どういう仕組みなんだろう)
はじめはみんなの活劇に圧倒され、世界に入り込んでいたけれど、とても作り物に見えなくて逆に冷静になってきた。
以前、松野家に遊びに行った時に、みんなが台本を読んでヘンテコなお芝居をしていた事がある。
だから今回もきっと、チョロ松くんプロデュースでわたしを驚かせようとしているんだろう。
「ニョーターイーモーリーー…オエェェェ…」
「カラ松!人んちの床に吐血すんなっ!!」
「らあぁぁあぶぅぅうほおぉぉーーーっ!!」
「何してんのいちまあぁぁあつっ!!」
ゾンビ一松くんが、チョロ松くんめがけ左腕を外して投げた。
投げられた腕をライトセイバーが捕らえ、打ち返す。
ベチャリと生々しい音を立て、床に転がる左腕。
ハリウッド映画顔負けな、特殊メイクと取れる腕。
鼻にまとわりつくむせかえるような死臭。
仕組みも分からなければ、演技とは思えない鬼気迫る戦闘シーン。
六人が作り上げたスリラー劇場を、わたしは固唾を飲んで見ていた。
「あぁもぅ!埒があかない!」
ゼェゼェと肩で息をするチョロ松くん。
切っても切っても蘇り、フラフラと立ち上がるゾンビ松くんたち。
チョロ松くんが袖で汗を拭ったその刹那、
「チョロ松くんっ!うしろーー!!」
「くっ!?」
背後から襲いかかったトナカイ衣装のゾンビに、ライトセイバーが奪われてしまった。