第67章 ※十四松とファンファーレを 五男END
主人公視点
空港のロビーで一人お茶を飲む。
待ち合わせの時間になっても十四松くんの姿が見えない。
(最後のいってきますはお預けかな…)
きっと十四松くんの事だから…うん、何かワケありなのだろう。
宇宙船に乗り込んだとか、空港と漁港を間違えたとか…さ。
立ち上がり、ペットボトルを捨てた。
いいんだ。
だって、十四松くんだもん。
しょうがないよ。
しょうがない…。
——いってきます、十四松くん
保安検査場へと向かう。
振り返る。
いない。
荷物検査の列に並ぶ。
また振り返る。
…いない。
——会いたい、会いたいよ…
最後にキミの笑顔を見たかった。
いってらっしゃいって言って欲しかった。
——ぉぉぉおおおおおおおーーー!!!!
あぁ、飛行機が発進する轟音すら彼の声に聞こえる。
涙で視界が海の底。
滲んで何にも見えない。
——ぉぉぉおおおおおおおーーー主ちゃぁぁぁああん!!!!
愛しい声が名前を呼んでいる気がした。
幻聴まで聞こえてくるとか、もう寂しさの末期だ。
さよなら十四松くん。
わたし、頑張るから…。
涙を袖で拭い、トランクを引っ張ろうとしたその瞬間、
「間にあっタイムリーーーーッ!!!!」
「わぁーーッ!?」
背中を強く抱きしめられた。