第67章 ※十四松とファンファーレを 五男END
振り返ればたくましい腕に包まれ、涙が彼のジャケットを濡らした。
「主ちゃん、遅くなってごめんね」
「会いたかった…さびしかった!」
「ぼくもだよ」
息が出来ないくらいぎゅってされて、好きってキモチが吐息と共に溢れ落ちる。
「ぼく、手紙書くよ!電話もする!!だからお願い、泣かないで?一緒に笑おうよー!」
「むり…だって寂しいんだもん、大好きなんだもん!」
顔を上げ見つめると、十四松くんもポロポロ泣きながらとびっきりの笑顔を見せてくれた。
「でもぼくね、スマイル満開な主ちゃんがいっちばん好きー!!」
スマイル満開でそう言われ、思わずわたしもスマイル満開になる。
「わーい!スマイルおそろーい!!」
「ふふっ、わたし…頑張るから…!十四松くんも頑張って!」
「がんばるよ!!めちゃくちゃがんばる!!だから…主ちゃん、二年後、帰ってきたら…ぼくと、ぼくと……」
涙で腫れた瞳が不安そうに揺らめいている。
抱きしめていた腕が解かれ、震える手がわたしの腕を握りしめた。
「けっこんしてください!!」
「十四松くん……」
彼の手を取り強く握り返す。
「主ちゃん?」
そんな不安そうに見つめないで。
大好きだって言ってるでしょ。
「はい…お願いします!」
彼の瞳が大きく揺らぎ、いつもの愛らしい笑みに戻っていく。
未来のための二年間が始まろうとしている。
終わりじゃない、希望に満ちた二年間。
「ねぇ、最後に…キスして」
「わかった」
目を閉じると、優しいキスが落とされる。
人目も気にせず、わたし達は何度も唇を重ねた。
夢と希望と幸福な未来を、心に誓い合うように——。
十四松くんは世界一野球バカで、世界一可愛くて、世界一素敵な男の子。
誰よりも純粋で無邪気な、わたしの大切な人。
かけがえのない恋人。
二年後また再会したら、二人で河川敷に行こう。
一緒にファンファーレを奏でよう。
「いってきます!!」
「いってらっしゃい!!」
二人の明るい未来を夢見て。
——おしまい——