第67章 ※十四松とファンファーレを 五男END
一松視点
「はぁー、十四松兄さん無事空港着いたかなぁ?」
トッティがスマホをいじりながらつぶやく。
壮行会から一週間経って、今日は十四松の彼女が日本から旅立つ大事な日。
十四松は、朝の五時半に起きて素振り一万本してから、空港へと向かった。
一方のおれ達は、特に何もせず昼過ぎまでダラダラと過ごしている。
洗練されたスタイリッシュクズだ。
「流石にいい歳した大人なんだから、成田くらい一人で行けるでしょ」
「甘いよチョロ松兄さん。十四松兄さんはね、1+1=十四松なんだから」
「いや、全然分からないけど」
トッティ、おれにはなんとなく分かる。
十四松にはこちらの常識なんて一切通じないんだ。
例えば、未来人が百年後からやって来たとしよう。
初めて未来人と接触した時に、「今流行りのなぞなぞあるんすけど、マジパナいんすよ。あ、聞いちゃいますー?イイっすよー。んじゃ問題!アルファがベータをカッパらったらイプシロンした。なぜだろう?」と問われて答えられるか?
否。無理だ。不可能だ。
それくらい十四松はぶっ飛んでるんだ。
新人類を超えた何かなんだ。
分かろうとせず感じるんだ。
おれ達は受け入れるしかないんだ。
あぁ、これが十四松というジャンルか…って。
「サスペンス分析しないで闇松兄さんっ!!」
「ってゆーか、お前の例えでますます分からなくなったんだけど!?」
「え…?今の声に出てた?」
「一松よ、熱弁だったぞ」
「……」
とりあえず黙っておくことにした。
心の声のつもりが喋りまくってて喉渇いたし。
もしかしたら、おれもあいつが心配で動揺してるのかもしれない。
「まー大丈夫でしょー。それよりみんな競馬行かなーい?めでたい日だから当たる気がすんだよねー」
おそ松兄さんが漫画本を閉じて立ち上がった。
「フッ、確かに…主は幸運の女神かもしれないしな」
「留学とか天上人だもんね!ってか十四松兄さん、まさかの逆玉!」
「あー!あやかりたーーい!!つーわけで行こうぜ!競馬ーー!!」
ノリノリで階段を下りて行くみんなの後を、おれも遅れてついて行った。