第67章 ※十四松とファンファーレを 五男END
「十四松くん」
「なーにー?」
「実は、話さなきゃいけないことがあるんだけど」
「うんうん」
なんだろう?
素振りしたいのかな?
でも少し寂しそう。
さっきまであんなに楽しそうだったのに。
「あのね、実は、前から憧れていたんだけど」
「うんうん」
憧れ?
やっぱり素振りかもしんない!
「師匠が推薦してくれたから応募してみたの」
「うんうん?」
師匠?
推薦?
武闘大会かな?
「それで、選考結果通知が来て——選ばれて」
「マジでー!!」
ラッパだけじゃなく格闘家だったんだ!!
すっげーー!!
「武器使うのー?素手ー?」
「文化庁の、派遣音楽家在外研修員として、来月からドイツに留学するんだ。だから、楽団も今月いっぱいで辞めるの。前から決まってたのに、ずっと言い出せなくて…言うのが遅くなって…本当にごめんなさい…」
「そーなんだ!!」
ぼく間違えちゃった!
素振りでも武闘大会でもなかった。
「うう…っ」
「十四松くんっ!?」
突然の痛みに顔が苦痛で歪む。
心臓が痛い。
苦しい。
ぼくはギューーって苦しくなった左胸を両手で押さえた。
「大丈夫!?具合悪いの?」
心配そうに優しい手が背中をさすってくれている。
ぼくってマジ自己中だね!
寂しいとか辛いとか、自分のことばっか!
主ちゃんが頑張るんなら、火星に行くって言われても応援してあげないとなのに!!
「からのーーー」
「えっ?」
「ボゥエッ!!!!」
ぼくは目と舌を飛び出させて得意の変顔をした。
「あれ…もしかして今のって?」
「全然痛くないっ!!主ちゃん!!おめでとーー!!」
「なーんだ!ビックリしたぁ!!あはははっ!!」
手をクネクネして触手をすると、笑い出す主ちゃん。
心の痛みを我慢して、いつもより多めにクネクネした。