第67章 ※十四松とファンファーレを 五男END
十四松視点
素振りいちまん本終えて、主ちゃんと河川敷で日向ぼっこ中。
太陽がサンサン気持ちいい。
風がないからあったかーい。
「あはははっ!そっかー、三日でクビになっちゃったんだ」
「いやぁ、まいったねぇ。凹み凹みぃー」
パン屋について聞かれたから、クビになったことを教えたんだ。
怒るかな?呆れるかな?と思ったけど、主ちゃんはお腹を抱えて笑い転げている。
ぼくのションボリをどっかへぶっ飛ばす、カワイイ笑い声。
笑顔を見てると、なんだか元気が湧いてきたから、ぼくは立ち上がって踊った。
大丈夫!心配しないで!って伝えたくなったから。
「マッスルマッスルー!!ハッスルハッスルー!!」
「ふふっ、元気になってよかった!ねぇ、十四松くんは力もちだから、力仕事の方が向いてるんじゃないかなぁ?」
「人力車とかー?」
「うーん、それよりも引っ越しとかは?」
「おおー!!」
タンスとか運んだりするんだよね?
それならぼくにも出来るかなー?
「十四松くん、頑張ってるんだね…」
「あっははー、だってぼくね!」
(主ちゃんをお嫁さんにしたいから!)
…あれー?
なんでか言えないや。
「……」
「固まっちゃってどうしたの?猫みたいな目になってるよ?」
「なんでもないよー!!」
「そ、そう」
主ちゃんは、座ったまま小石を拾って川に投げると、波立つ水面をじーっと見ている。
「私も負けないように頑張らないと」
「主ちゃんはいつもがんばってるよ?」
「…そうかな」
そう言って、今度は小石を空に向かって投げた。
小石は放物線を描き川に飛び込む。
主ちゃん。
ぼく、すっごく偉いなぁって思ってるんだ。
夢を叶えてプロのラッパ吹きになって。
大変そうなのに、文句も言わないでクタクタになるまで働いて。
だからぼくもがんばろうって思って、やっと受かったバイトだったのに…。
ゴメンね、主ちゃん。
給料三日分じゃあ、一緒に暮らせないし何にも買ってあげられないや。