第66章 愛のカラ騒ぎ 次男END
パイでかさんは鉄球…もといGボールを拾い上げ、愛おしむように頬ずりしている。
「この子のおかげで自信がついた。よーし、この会社で心機一転ガンバれるって思えた。そして、デスクが隣だった同期の松野くん、あなたを一目見た時、ナウくてイケイケで胸キュンで…」
「な、なうくての後何て言った?聞き取れなかった」
「つまり一目惚れしたの!!」
「すみません」
また説明させてしまった。
一体オレは、何度彼女を傷つけてしまうんだ。
「こんな貧乳なあたしじゃ、イヤだよね…」
「い、いや。そのままの方がいいと思うぞ」
「なら、このままの…ありのままの伊予を愛して?松野くん!」
「悪いが、それは出来ない」
オレの一言で、パイでかさんの瞳から涙が溢れ頬を伝う。
人を傷つけるのは好きじゃない。
本当は誰も傷つけたくないんだ。
だが主、お前への思いを貫くにはこうするしか…。
泣きじゃくるパイでかさんの涙を指で拭い、真っ直ぐ見つめた。
「ごめんな…けど、分かってくれ!きっと、オレじゃない誰かがキミを幸せにしようと待っている!キミを待つデスティニーはオレでは無かった——それだけだ…」
「……」
下を向き口ごもるパイでかさん。
このまま気の済むまで側にいてやろう…と思ったら、
「……け…んない…」
ブツブツと何かを言い始めた。
「ん…どうした?何だって?」
「何が……何が……」
パイでかさんはGボール二個を両手に構える。
「何がデスティニーだぁ!?わけわかんねーこといってんじゃねぇぞチンカスヤロォーーーッ!!!!」
「へぶしっ!!??」
テレビで芸人がパイ投げするが如く、超至近距離でGボールをぶつけられた。
つまり…二つの鉄球が顔面にクリティカルヒットした。
鼻血を噴射し、草むらに崩れ落ちる………オレ。
「えーーんっ!!松野くんのイタキモバカニートあがりーー!!」
「ニートあがりっ!?」
「こんなクソだっせぇイタイ服雑巾にしてやるぅ!!雑巾にしたのち便所掃除してやるんだから!!バイビーー!!」
「去り際すらデスワード!?おいっ!牌出化さん?牌出化さぁーーんっ!!」
パイでかさんは顔面腫れ上がり鼻血まみれなオレを残し、走って駅の方へと消えて行った。