第66章 愛のカラ騒ぎ 次男END
手渡されたリボンの付いたラッピングの袋を、そっと彼女の手へ返した。
「どうして…二番目でいいって言ってるのに…」
「そんな、自分で自分の価値を下げるようなこと、言ってはダメだ」
「伊予は良いから言ってるの!」
「すまない」
震えるパイでかさんの肩を、そっと両手で掴んだ。
「オレの中で、マイハニーはナンバーワンでオンリーワン、他に代わりなんていないし、何よりハニーを裏切るようなマネだけは絶対にしたくない。キミのため、ハニーのため、そして何より、己自身のために!!オレはキミの気持ちに応えられない…!」
「なんで…なんでよっ!そんな言葉じゃ納得出来ないっ!」
「っ!!」
パイでかさんが、オレの手を肩から振り払おうと身体を横にくねらせた時、事件は起きた。
——ゴトリ…ッ
「ッキャア!!」
「ん?」
鈍い音と共に、足元には鉄の塊が二つ。
そして、胸元を両手で隠すパイでかさん。
えぇぇぇ…——。
鉄球て…。
一体身体のどの部分を自己鍛錬に励んでいたんだ?
肩が凝るだけじゃないか?
どうりでぶつかる度傷を負うわけだ。
「あーあ、まいっちんぐ。このタイミングでバレちゃうなんて」
自嘲するような笑顔を見せ、ため息を吐くパイでかさん。
「伊予のおっぱいが偽物だって知って引いたよね」
「いや、むしろ安心したさ」
心から——な。
「伊予ね…元彼に、胸が小さくて振られたの」
パイでかさんは、遠くで沈みゆくスワンボートを眺めながら語り始めた。
「失恋が原因でノイローゼになって、前の会社辞めちゃってね。自暴自棄になって何もかもどうでも良くなっていた。そんな時、ネット通販でこの『男の性欲暴発!魅惑のGボール』に出会いました」
なんでもいいがすごいネーミングだな。
「半信半疑でこれつけて面接受けたら、今の会社の内定が取れたんです」
そんな利用者の声風に言われてもオレは買わんぞ。
そのままの主を愛しているからな。
って、え…?
オレを取った人事も同じ人だよな?
……人を見る目がないのか?
いや、考えるのはよそう。
何故だか分からんが、ものすごく胸を抉られた気分になる。