第66章 愛のカラ騒ぎ 次男END
家に着くと、不機嫌なハニーに出迎えられた。
「もう、遅いっ!電話も出ないし!」
「すまない。チビ太のとこに寄っていた」
「寄り道するのはいいけど、教えてくれないと心配するでしょ?」
「悪かった」
上着を脱ぎ、片手でネクタイの結び目を引っ張ると何やら熱い視線を感じる。
「どうした主?」
「べ、べつにっ!」
主はプイッと目を逸らし、キッチンへとかけていく。
なんだ?今更オレが着替えてるだけで何故照れる?
着替えぐらいで喜ぶならば、これからは積極的にハニーの前でネクタイを外してやろう。ついでにワイシャツのボタンもひとつひとつ、ゆっくり、丁寧に、カッコよく。
シャツと靴下を洗濯カゴに出し、顔つきパーフェクト部屋着に着替えていると、不意にデミグラス臭が鼻腔をくすぐった。
急いでキッチンへと向かい、背中からLOVE羽交い締めをする。
「ハニー!このかぐわしいデミグラス臭はもしや!」
「なにデミグラス臭って?……ビーフシチューです」
「食べる!食べさせてくれ!」
「じゃあ運ぶの手伝って」
・・・
二人で食卓を囲む頃には、主の機嫌もすっかり直っていた。
—遅くなる日はちゃんと連絡する—
フーン、主をマスターしたオレにも、まだ学ぶことが残っていたとはな。
こうして、なんてことない一日はあっという間に終わった。
終わっては始まり、始まっては終わる。
仕事をしていると、一日がすぐに過ぎ去ってゆく。
無職だった頃は時間を持て余し、毎日何をして己を高めるか悩んでいたのにな。
そして次の日、いつも通り出勤した。
まさかあんなハプニングが起きるとは、この時のオレは知る由も無かった。
・・・