第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
チョロ松視点
急に、みんなの顔を思い浮かべたら、思い出が溢れ出して、涙になって…僕の頬を濡らした。
なんでだろう?
僕、一人でも頑張れたんだ。
ちゃんと頑張れたんだよ。
それなのに、主ちゃんに会ったら不安や寂しさ、辛さが込み上げてきて、思わず抱きしめていた。
主ちゃんはそんな僕をあやすように、大好きな背中トントンをしてくれる。
「ねぇ、僕、これで…これでよかったんだよね?」
「うん…」
なんだよこれ。
今度こそカッコいい彼氏になれたと思っていたのに。
結局、主ちゃんに甘えてしまっている。
「ぎっどみんなも…頑張っでるよねっ」
「頑張ってる。みんな、チョロ松くんに負けないように頑張ってるよ。おそ松くんだって…きっと大丈夫」
おそ松兄さんの名前を呼ばれ思わず肩がピクッと動いた。
主ちゃん、どうして兄さんの名前を…?
どうして…何もかもわかってるみたいに…。
「でも、ぼぐ、最後まで兄さんどぢゃんど話せなぐっで…だがら…手紙書いだのに、それすら…渡せなぐっで…!」
「目が真っ赤でウサギみたい。ほら、鼻水出てる」
ティッシュを目の前に差し出され鼻をかむと、少し呼吸が楽になった。
「手紙、出しなよ」
「…えっ?」
「せっかく書いたんだから、出しな?言葉にしなくても伝わる事はあるけれど、分かっていても言葉にして欲しい事だってあるんだよ?」
そう言って、彼女は笑った。
その時気がついた。
主ちゃんも泣いていた。
「わたしはチョロ松くんが大好き。だから、大好きなチョロ松くんの兄弟も大好き。大好きな人の大好きな人が大好き…って、よく分からないねっ」
エヘヘと笑って涙を乾かすように上を向き、満月を見つめている。
「っと、ごめん。もうすぐ終電だから、今日はもう帰らないと」
寂しさを隠すように微笑む主ちゃん。
「待って」
華奢な腕を掴む。
そんな顔されたら、引き止めたくなるじゃないか。
一秒でも長く一緒にいたくなるじゃないか。
せっかく会えたんだから、最後は心から笑わせたい。
笑顔でまたねって言い合いたい。
肩を掴み、思いを繋ぎ止めるように、じっと主ちゃんを見つめた。