第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
「6人で4個を分けるってありえなくない?割り切れないもん。だから、僕たちは36時間も寝ずに悩みまくったんだ」
「今川焼きで!?」
「そこで、松野家の頭脳である僕が機転のきいた答えを導き出した。割り切れぬのならば、一つを親にあげ、残りの3つを6人で分けよう…と」
おやつの奪い合いの話なのに、妙にスリルと臨場感がある。
「それで、無事仲良く分けっこしたの?」
「いや、事態は思わぬ方向へと進んだ…。なんと、つぶあんに紛れて1個だけクリームだったんだ。正直まいったね。神の悪戯かと思ったよ」
今川焼きでそんなに熱くなれるとは、なんと幸せな6人なんだろう。
きっと、日々の些細なことに喜びを見出せるに違いない。
「結果、6人で殺し合いの喧嘩になって、僕が食べたのはつぶあんだった。ってゆーか、後半みんな意識ぶっ飛びながら戦ってた」
「あはははっ!!おやつでそんな展開になるなんてっ!!」
堪えきれずお腹を抱えて笑うと、釣られて彼も笑い出す。
しばらく2人の笑い声が、月夜に響いた。
「いやぁ、今思い出してもホントくだらなくて——」
チョロ松くんが立ち止まる。
「ホント、楽しかったなぁ…」
懐かしむように月を見上げるチョロ松くん。
その目は涙で赤らんでいた。
「…大事な思い出だね」
「そう、かもね」
背伸びして涙を指で拭ってあげると、彼の腕に包まれた。