第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
・・・
席に着きメニューが運ばれてくると、パスタをフォークにくるくる巻きつけながら、仕事の話で盛り上がった。
チョロ松くんは楽しそうに、お世話になっている上司、同期の仲間、配属された部署…いろんなことをわたしに報告してくれた。
「でさぁ、僕のこと名前じゃなく新人って呼ぶんだよー」
「ふふっ、そのうち松野って呼んでくれるって」
「あと、この間なんて接待飲みで終電過ぎちゃって……」
ほろ酔いで頬杖をつきながら耳を傾けていると、急にへの字口が閉じられた。
「どうしたの?」
「いや、僕ばっかり話しちゃって悪いなぁって」
「ううん、いつもわたしの話を聞いてもらってるし、仕事の話楽しいよ?」
そう言うと、チョロ松くんは伏し目になり、
「…ありがとう」
ほんのり頬を染めてぽとりと呟いた。
思わずわたしも照れくさくなり、ごまかすように会話を続ける。
「ええと…それで、終電過ぎてどうなったの?」
「あ、あぁ、その後上司がタクシー出してくれてさ——」
おしゃべりなチョロ松くんもかわいいな、なんて思いながら、つかの間のひとときを二人で過ごした。
そして、あっという間に別れの時間が訪れ、二人でお店を後にした。
・・・
手を繋いで夜道に声を響かせる。
「綺麗な満月だね」
「ほんとだ、今川焼きみたい」
「そう…かな?」
(満月を今川焼きに例える人、初めてだよ…)
すると、チョロ松くんは何かを思い出したように「あっ」と声を漏らした。
「前さ、実家でおやつに今川焼きが4個出た時、兄弟で取り合いになったんだ」
そう言って、楽しそうにニコニコと語り始めた。