第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
改札口から一際大きな人の波が押し寄せると、人ごみの中をかき分けてチョロ松くんがやって来た。
「お待たせ、主ちゃん…」
「チョロ松くん…っ!」
嬉しくて泣きそうになるのを必死に堪えると、照れながらそっと頭を撫でてくれた。
一ヶ月ぶりに会った彼は、まるで別人のようだった。
見慣れた緑のパーカー、ネルシャツでは無く、新品のビジネスバッグに、ピカピカの黒い革靴、濃いグレーのスーツにわたしがあげたモスグリーンのネクタイを締めている。
雰囲気もどこか凛として、社会人のキリッとしたオーラを放っているようないないような。
「あはは、ひ、久しぶりに会うと緊張するなぁっ」
だけど、ウブなとこは相変わらずチョロ松くんだった。
そんな彼の腕を組んで歩き出す。
「ちょ…っ!主ちゃんっ!?」
「お腹空いちゃった!何食べよっか?」
「えっと…少し歩くけどイタリアンは?」
「やったぁ!」
二人してスーツ姿でごはんを食べに行くのは初めてだ。
晴れて社会人カップル誕生である。
嬉しくなり、戸惑う彼の腕にぴとっとくっついて、イタリアンレストランへと向かった。