第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
おそ松くんは何かを察したようだった。
そして、
「…!?」
右手を包み込まれる。
「お、おそ松くんっ!?」
「主ちゃん、もし、もしさ?自分に五人の同じ顔した妹がいたら…どう思う?」
「えっ?ええと…」
意外な問いかけに、言葉が浮かばず俯いていると、「ま、わかんねーよな」と寂しげにつぶやき、首を横に振った。
「ちっさい頃から半ダースで服買われて、しょっちゅう名前を間違えられ、それが嫌で色違い着るようになって、それでも勉強やスポーツをいつも六人で比較されて、それなのに、六つ子ってだけで近所でなぜかチヤホヤされて……気づいたらいつしか大人になってて…そんで」
痛いほど手をギュッと握り締められる。
「ある日、弟に彼女が出来て、そいつが…独り立ちしようとしてる。ずっとみんな一緒だったのに…。なぁ、仕事、決まったんだよな?そうなんだろ?でなきゃ親に挨拶なんて行けねーよ」
「それは……」
こんな時、なんて声をかければいいんだろう。
わからない。
一人っ子のわたしには、その葛藤は想像もつかない。
わかってあげられなくて、情けなくて惨めで、どうしようもない無力感に襲われる。
「六つ子が嫌になって、弟なんていらねー、一人っ子だったらなーなんて、何度も思った。だけど、何でだろうな?何で俺…こんなに………」
口ごもると、カウンターに突っ伏すおそ松くん。
腕に顎を乗せながら、手は固く繋がったまま。
その手から、行き場のないおそ松くんの気持ちが伝わってくるようで。
彼の気がすむまで、右手を預けようと思った。