第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
不安と緊張で頭の中がこんがらがる。
「いや…だ、だから、そろそろ本格的な将来設計を考えようと思ってさ」
違う。
本当は…。
「…セクシィの定期購読をネットで注文したんだ」
こんな話をしたい訳じゃ…。
「挨拶、同棲、結納、そして結婚!いやぁー、先が長いよね!アハハッ!!」
「……」
五人全員黙り込む。
…やっちゃった。
挨拶のことより先に、就職するって伝えないといけなかったのに…。
あと一歩勇気が出なくて、自ら話を逸らしてしまった——。
「でた…」
トド松がポツリと声を漏らすと、おそ松兄さんが頷き、
「みんな…大変だーっ!!ライジングだ!!ライジング思考スキーだあぁぁあー!!」
茶化すように手をメガホンにして騒ぎ始める。
「近所迷惑だから騒ぐな!いい加減その呼び方やめろっ!!」
「フッ、オレは応援してるぜ!」
カラ松からウインクが飛んできたので、とりあえず目を逸らす。
「チッ……調子に乗んなクソ松」
「あれぇ?もうお肉無くなっちゃったー」
「おい十四松!?いつの間にオレのラストロースを!?」
・・・
——結局、言えなかった…。
就職するのを言わずに、彼女の親に挨拶行くとだけ伝えて将来設計語り出したらさ、そりゃあバカにされても仕方がないよね。
情けなくなって、思わず父さんと母さんを見ると、二人は惨めな僕の心を、優しく包み込むように笑ってくれた。