第65章 ※ライジング思考スキーと呼ばないで 三男END
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「ニート達、今夜は焼肉よ!!」
「ィヨッシャーーーー!!!!」
六人で『焼肉』の二文字に飛び上がり、ガッツポーズを取る。
手分けして台所からホットプレート、焼肉のタレ、てんこ盛りな野菜、肉肉肉を運び、ちゃぶ台へ並べた。
母さんと父さんは、いつも通り台所のダイニングテーブルで食事をしている。
「母さん!最近夕飯豪華じゃないか?昨日はアンコウ鍋だったし…」
ちゃぶ台を囲み定位置に座ると、肉が大好きなカラ松兄さんが目を輝かせ、母さんに話しかける。
「カラ松、深くは聞かないでちょうだい」
「え?どーゆーこと?」
「そのうち分かるわよね父さん?」
「そうだな母さん」
フーンと顎に手を当てて悩むカラ松兄さん。
そんなやり取りを横目に、嬉しさと寂しさで胸が締め付けられた。
分かってる。
分かってるから。
きっと母さんは、僕が家を出る前に、沢山ご馳走を食べさせてくれようとしてるんだ。
(ちゃんと、伝わってるよ…)
思わず泣きそうになったので、エリンギを焼く事に没頭し気を紛らわせる。
(はぁ…キノコってなんでこう、火を通すとそそる匂いがするんだろう…)
「ねぇ……エリンギしかないんだけど」
「え?あ、あぁごめん!」
一松に言われてホットプレートを見たら、うっかり一面エリンギだらけにしていた。
「チョロ松兄さんもしかして菌活ー?イマドキちょっと古いよねー」
トッティはそう言いつつもエリンギをパクパク食べている。
「チョロ松ー、肉焼くから菜箸貸して〜」
「は、はいっ」
おそ松兄さんに菜箸を渡すと、エリンギをはじに避けて牛カルビを焼き始めた。
けれど、案の定すぐ飽きてぐずりだす。
「だーもう疲れた!焼肉奉行〜焼いて〜!」
「30秒くらいしか経ってないけど!?まぁいいや」
僕は箸を受け取ると、焼けたエリンギと肉をみんなの取り皿に乗せていく。
何故か勝手に焼肉奉行にされていたが、いいんだ。
僕自身、みんなに肉を焼いてあげたかったから。
こういう家族との何気ないやりとりともお別れだって思うと、どんな些細なこともかけがえのないように思えた。
こうして六人、集まって過ごせる時間が、さ。