第64章 ※トッティの葛藤 末弟END
暫くすると、お父さんが半開きのシャッターをくぐって来た。
いつもの白いコックコートではなく、ラフな私服姿だ。
トッティが紙袋から菓子折りを出して立ち上がる。
「あのっ、こ、こんにちは!」
「松野くん、わざわざ呼び出してすまないね」
「これ…つまらない物ですが…」
「そんな気を使わなくていいのに。ありがとう」
お父さんは菓子折りを受け取ると、トッティに座るよう手でジェスチャーした。
わたしはトッティの隣に座り、向かいの席にお父さんが腰掛ける。
(なんか面接みたい…緊張してきた)
「突然なんだけど、松野くん」
「はい!」
トッティは爽やかな声で返事をした。
「あははっ、元気だね!君、今なんの仕事してるの?」
「っ!?」
(お、お父さん!?)
唐突に予測していなかった質問を投げかけられ、二人して動揺する。
「えっと…シブヤのカフェで……バイトしてます」
「そうか…社員ではないんだね?」
「はい……」
笑顔が消えるトッティ。
てっきり、付き合っているのか聞かれると思っていた。
それはトッティも同じだろう。
就職してないから交際反対とか…もし、そんな事言われたら——。
黙り込むお父さんを見て、緊張できゅっと身体が固まる。