第64章 ※トッティの葛藤 末弟END
「やぁっ、主ちゃん!」
3日後の定休日。
水色のジャケットにネクタイを締め、トッティがうちに来た。
シャッターを半分開けて店内に招き入れ、カフェスペースに案内する。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
「うーん、カフェラテは出来る?」
「オッケー!」
ニコニコしてはいるものの、表情が硬い。
そりゃそうだよね。
理由も分からず、彼女の父親に呼び出されるなんて。
娘であるわたしですら緊張する。
カフェラテとチーズケーキを2人分テーブルに置き、向かいに座った。
「ありがとう!」
「お父さん来るまでお茶してよう」
「うん…ところで、何でボク呼ばれたの?」
カフェラテに角砂糖を2個落とし、上目遣いで聞いてきた。
「わたしも理由聞いたんだけど、なぜか教えてくれなくて…」
ふぅんと相槌を打つと、トド松くんはティースプーンをクルクルと踊らせた。
俯いているので表情が見えない。
「急にゴメンね。バイト休んでないよね?」
「え?あ、あぁ、後輩にシフト変わって貰ったからへーきだよっ!」
「そうなの?急ぎの用事では無いだろうから、今度の定休日でもよかったのに」
「ううん、気にしないで!そろそろ彼氏としてちゃんと挨拶したかったしねっ」
そう言われて気がついた。
キチンとした服装、椅子の横に置かれた老舗和菓子屋の紙袋…。
トッティは、お父さんの用事が何であれ挨拶しに来てくれたんだ。
『お友達』としてではなく『彼氏』として。
深く考えず、脳天気に呼んだ自分が恥ずかしくなる。
「あっ、顔赤くして…もしかして緊張してる?」
「…うん」
「実はね……ボクも」
「トド松くん……」
トッティの顔が近いたかと思うと、
「!!」
「えへへっ、先に自分へのごほうび」
不意にキスをされた。
唇からほのかに香るカフェラテの甘ったるい味は、まるでトッティそのものだった。