第61章 カラ松と媚薬で酔いしれたい時に読む話
「主…こっちに来い」
エアコンをつけていても寒いものは寒い。
…バスローブ一枚だしな。
優れた電化製品だって、肌のぬくもりに勝るものは無いんだ。
オレはハニーの肩をそっと抱き寄せた。
その時、
「っ!!」
(ん?)
肩に触れただけなのに、主は身体をビクンと震わせた。
「ハニー…もしかして寒いのか?」
彼女の髪を優しく撫でる。
「……ん…っ」
「!?」
なんだ今の猫なで声は。
映画の夫婦喧嘩から発せられる険悪なムードを打ち消す、魔性のボイスが聞こえたんだが…。
すると、ハニーはオレの肩に頭を乗せ、呼吸を荒げ始めた。
抱いた肩から部屋着越しでも伝わる、火照った肌…。
「どうした?もしかして熱でも…っ!」
ハニーの後頭部に手を添え、額を合わせようと顔を近づけると、
「か…らまつ…くん」
オレの目に映るのは、赤らんだ頬と艶めかしい瞳。
(こ、これはっ!?)
目の前にいるのは、一瞬でオレの思考を狂わせる淫魔だった。