第61章 カラ松と媚薬で酔いしれたい時に読む話
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『何かをしたらどう?しようと思えば何でもできるわ…』
『君の夢のシナリオでは、僕に何をして欲しいんだ?』
ソファーで寛ぎながら、主が借りてきた恋愛映画を観ている。
子猫ちゃんは寒いからか、猫用の丸いカゴの中、フカフカの毛布に潜り込み眠っている。
それにしてもマイハニー?
なぜこの映画をチョイスした?
カテゴリーがラブロマンスに分類されてはいるが、一組の男女の、恋愛の始まりから夫婦生活の終わりを描いた、心に何かがグサグサ突き刺さる映画だ。
病院に勤める優秀な妻に、気ままなペンキ塗りの夫。
ワイフは不満があるようだが、オレとしては、ペンキ塗りだって働いているんだから偉いと思うぞ。
ん?
ワイフが不満?
ペンキ塗りに…?
も、もしや…。
コレは、ハニーから遠回しのメッセージ?
さっさと働けという辛辣な思いを、間接的に伝えているのか!?
いや……考えすぎ…か。
相変わらず、何ものにも縛られない自由を謳歌する日々だが、面接50社達成したじゃないか!
怯むなオレ!
それよりも、問題は媚薬だ。
(何も起こらないな…)
一時間ほど経ったが、オレの身体に変化はない。
(残念だが…デカパン博士には、ただの美味いアップルジュースだったと伝えないとな)
「ハニー、この映画どうだ?オレには中々考えさせられるテーマだ」
念のため、ハニーの様子を探ろうと話しかけた。
「人気だったから借りてみたんだけど…思ってたより内容がヘビーかな…」
「そうだな」
よかった。
ハニーはワザとではなく、たまたまこの映画をチョイスしたようだ。
そして、表情もフツー、至って平常心。
やはりハニーにも薬の効き目はない…か。