第59章 一松とにゃんにゃんしたい時に読む話
先にベンチで昼食を済ませ、二人で園内を廻ると、パンダ、ゾウ、猛禽類…様々な動物達が出迎えてくれた。
そんな中、やっぱり一松くんが一番喜んだのは、
「ライオン…百獣の王」
ネコ科だった。
「わぁ、迫力満点」
「ああ最高だ…非の打ち所がない…おれ、金が貯まったら猫転換手術するんだ」
「あはは…」
嘘か本気か分からない。
いや、恐らく本気かな…。
「ねぇ、あっちにはトラがいるよ!」
猫転換手術から無理やり話を逸らす。
「待って、もうちょいライオンを堪能してからトラを見る」
「ふふっ、わかった!」
猫の事になると夢中になる一松くん。
そうして、ライオンを三十分楽しんでからトラを見に行った。
トラはなんと、世にも珍しいホワイトタイガー。
沢山の人だかりが出来ている。
説明が檻の横に書いてあった。
『インドに生息するベンガルトラの白変種です。
青い瞳に、体毛は白色もしくはクリーム色に黒の縞模様が特徴。
かつてはインド北部や中東部に数頭いたといわれる白いトラも、トラ全体の数が減ってしまった今日では、飼育下でしか目にすることができません。
全世界でも250頭あまり、国内には30頭ほどしかいない希少種です』
「…マジか!神か…神なのか!?」
「綺麗…白って神秘的な雰囲気があるよね、白蛇とかさ」
「おれもそう思う」
すっかりホワイトタイガーに魅了され、鼻息を荒くする一松くん。
念願だった動物園、無事に来られて本当によかった。
(こんなに喜んでくれてるし…)
いつも無表情なのに、ニコニコしている可愛い横顔を見ていたら、不意に冷たい北風が吹き抜けていった。
「さ、さむいっ」
なびく髪を抑え身体を震わせる。
すると、一松くんが無言で手を繋いできた。
「あったかい…ありがとう」
「……」
トラの方を向いているので見えないけど、
(きっと、顔が真っ赤なんだろうな)
繋がれた手の温もりに心がじんわりとあったまる。