第58章 ※十四松とのんびりしたい時に読む話
主人公視点
「なにやってるの!ど、どうしよう!」
「あっははは、ゴメンなサイドスロー!」
かまくらから出て、スコップで顔付近の雪を削ろうと試みるも、ビクともしない。
(どうしよう…これじゃあ凍傷になっちゃう!)
しかも首を冷やすのって、相当マズいのでは…。
「十四松くん、自力で抜けられそう?」
「いやっはっは、まいったね〜動けないっ」
「誰か手伝ってくれる人いないかな…」
ふと公園の入り口を見ると、男女三人連れが目に入った。
女の子の間を歩いてる男の人が、チラリとこちらを一瞬だけ見た気がした。
オシャレなニット帽にピンクベージュのダッフルを着たその人は、見覚えのあるというか…十四松くんとおんなじ顔だった。
「あのっ」
「トッティ!」
わたしが話しかけるより先に、十四松くんが名前を呼んだ。
無反応なトド松くん。
両脇の女の子は、わたし達を見て怪訝そうな顔をしている。
三人は少しだけ立ち止まったかと思うと、すぐにスタスタと歩き始めてしまった。
「トッティつれないぜ!」
「しょうがないよね、友達と一緒だったみたいだし…」
わたしは一人、サクサクとかまくらを削る。
ほんの少し心細くなり手を止めると、十四松くんと目が合った。
「主ちゃん」
「なあに?」
「なんか眠くなってきたー」
「うそっ!?ダメッ!絶対に寝ちゃダメ!!」
かまくらにはまって凍死とか、悲劇で喜劇すぎる。
あまりにもシュールな危機的状況に、泣くのを堪え必死にスコップで雪を掻いた。