第58章 ※十四松とのんびりしたい時に読む話
そうして歩くこと20分弱。
猫の足跡すら無い公園にたどり着いた。
十四松くんはテンションが上がり、雪の中バタバタ泳ぎ始める。
「わっせわっせわっせわっせ!!」
「あはははっ!雪ぐしゃぐしゃになっちゃうよ!」
「見て見てかまくらーー!!」
「え?って、えぇぇえ!?」
泳いでいると見せかけて、雪かきしながらかまくらをエッサホイサと建造している。
(かまくらって、普通スコップ使わないと作れないよね…?)
「主ちゃんも作ろうよー!!」
「は、はーい!」
とりあえず、湧き上がる疑問はどっかに置いておく事にした。
十四松くんだし…ね。
十四松くんがドーム型に雪をかき集め、わたしが水飲み場の水をかける。
ちょうど、忘れ物のお砂場セットがベンチにあったので、スコップとバケツを借りて作業に専念した。
バケツに水を汲み、スコップでパシパシと雪を叩いて補強する。
・・・
そんなこんなで、かまくら作りに没頭してから一時間が経った。
「すごい…こんなに早く作れるなんて!」
目の前にある二人の努力の結晶に、ワクワクが止まらない。
「うーおーー!!手伝ってくれてありが盗塁王!!」
ちょうど大人が二人入れるくらいの、小さくてかわいいかまくらが出来上がった。
「十四松くんの人間ショベルカーのおかげだねっ!ちょっと待ってて」
わたしは自販機からあったかいおしるこを買ってきた。
「はいどうぞっ」
「やったぁーー!!」
二人でかまくらに入り、かじかんだ手をおしるこの缶であっためる。
いい大人二人が、公園にかまくらを作りまったり過ごす…。
他人の目が気にならないといえば嘘になるけれど、
(十四松くんが喜んでるなら、イイよねっ!)
身体を寄せ合い、つぶあんたっぷりのおしるこをすすった。